福建省福州生れと伝わる陳十四(陳靖姑)は、浙江南部でも、雨水順調、妖怪退治で地域の安寧を守る女神として、人々に篤く信仰されている。陳十四の生涯と妖怪退治の物語は、清代の小説『閩都別記』(里人可求作)のほか、「娘娘傳」「平妖傳」「霊経」「南游」などと呼ばれて、木偶戯、地方劇、語り物の鼓詞、漁鼓などで演じられ、知らない人がいないほど広く親しまれている。 福建と境を接する山岳地帯に位置する泰順は、古くから「木偶の郷」と呼ばれ、人形芝居が盛んな地域で、特に旧正月には、あちこちの廟で、糸操りの「娘娘傳」が上演される。 この劇は、信仰と深く結びついていて、必ず女神像の前(無ければ形代を祀る)で上演し、女神登場の場面では、線香を供え、霊符を燃やす。人形遣いは、上演中は精進潔斎する。 「娘娘傳」は13段、7日7晩で上演される。 観音の髪の毛が誤ってこの世に落ちて蛇の精になった。蛇の害を防ぐため、観音は2滴の血を滴らすと、雨水となって福州の陳道士の妻の口に入り、陳靖姑が生まれた。陳靖姑は閭山で修行し、各地の妖怪を退治し、雨水順調、子授けにも霊験あらたかだと信じられ、土地の守護神として篤く信仰される。泉州の洛陽橋建設にまつわる話を始め、多くの民間伝承と結びついて語られるが、猿の妖怪が出てくるこの段は、閩南語地区で特に人気があり、一段だけ演じるときにはこの段が演じられることが多い。 本動画では、第5段「揚州府で妖怪紅毛猴を退治する」の段から一部を公開する。 なお、「中国木偶戯関係写真資料データベース」検索頁で、演目に神仙「娘娘傳」、年月日に新暦「2008年2月19日」と入力すると、この動画の画像をまとめて見られるので、参照いただければ幸いである。 |