紹興に明代以来伝わる目連戯については、魯迅によって、しばしば紹介されている。
『朝花夕拾』(1926)に録される「五猖会」「無常」、「後記」及び『且介亭雑文末篇附集』(1936)に録される「女吊」などがそれである。
魯迅が記す「女吊」では、女吊(女性の吊死鬼)と男吊(男性の吊死鬼)が登場し、蘇生のために身替りを求めて(「討替代」)争う。
この前良村の(調腔)目連戯でも、1936年のころとあまり変わらない「女吊」「男吊」の演出が見られる。
I 相調 |
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| 1) | 出家の境涯を嘆き、仙桃庵を脱走してきた尼姑が、還俗して配偶を得たいという願望を持って、徘徊する。 |
| | 一個年輕尼姑對於出家奉佛的清淡生活,討厭起來, 偷偷地脫離仙桃庵,下山而徘徊。心裏願望遇有男女之緣。 |
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| 2) | 碧桃庵を脱走してきたが登場し、尼姑に語りかける。尼姑は取り合わず、二人は別れて徘徊する。 |
| | 一個和尚也懷有俗心, 脫開碧仙庵, 看見尼姑, 心慕其姿色, 要說幾句, 但尼姑不理, 兩人分手, 各自徘徊。 |
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| 3) | 歩き疲れた尼姑は、古びた廟を見つけて、内に入り、仮眠をとる。和尚、廟外にて還俗し配偶を求める心境を述懐、廟中に入り、尼姑に言い寄る。尼姑、拒む。 |
| | 走累的尼姑發現一所古廟,走進而打悃。和尚在廟外說出還俗而追求鴛鴦之緣的願望。走進廟裏,發現尼姑,就向她求婚。她卻拒絕。 |
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| 4) | 和尚、なおも言い寄る。尼姑、遂に許す。二人、抱擁す。 |
| | 和尚仍然繼續求婚, 尼姑遂於答應。二人抱擁。 |
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| 5) | 尼姑、退場、和尚、残って吟唱。やがて、尼姑、登場、二人、連れ立って山を降る(退場)。 |
| | 尼姑下場。留下的和尚依然歌唱,一會兒後,尼姑再上場。兩人攜手下山而去。 |
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II 捨釵 |
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| 1) | 詐欺師二人出る。橋を架けるための募金と称して、僧侶に化け、門付けして寄付をつのる。 |
| | 拐騙兩人,張賢友和段義仁,,冒昧借於修復斷橋的名義而裝扮僧侶而募化於富家。 |
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| 2) | 詐欺師、蕫氏の門前に至る。夫人陳氏、婢女とともに応対、子ができないことを憂いていた夫人は、頭に挿していた金釵を抜いて、喜捨する。 |
| | 拐騙二人走到富商董氏門前而肯求喜捨, 夫人陳氏為了祈求生子兒,將金釵給他們喜捨。 |
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| 3) | 夫蕫員外、下僕を連れて登場、詐欺師が陳夫人から金釵をもらったこと、夫人と情を通じたことを、自慢する。蕫員外は、詐欺師と見破り、「その金釵を買い取るから家まで来い」、といい、詐欺師を連れて家に帰り、2人を捕らえて、鞭打つ。 |
| | 董員外帶著奴僕而上場。拐騙二人將緣簿提示而肯求募化,員外查看緣簿,發現董門陳氏喜捨金釵的記載,拐騙誇張說,”通情於陳氏,遂獲得這金釵”。員外心裏懷疑,向他們說,可以將這金釵換為現金, 就讓他們一起來家裏,兩個拐騙跟隨員外到他家裏。員外檢查金釵,看破他們為騙子,就叫奴僕捉住他們而緶打。 |
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| 4) | 蕫員外は、さらに夫人に金釵のありかを問う。窮する夫人に対し、不貞をなじり、折檻した上、夫婦の縁を切り、代わりに婢女春香を妾にする。夫人、自縊を決意する。 |
| | 員外向陳氏提交金釵, 陳氏無法提交, 員外斥責她為不貞之婦, 立刻離休陳氏, 而將婢女春香娶為侍妾。陳氏絕望, 企圖懸梁而自死。 |
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III 女吊 |
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| 1) | 20年前に自縊した妓女の玉芙蓉の幽霊が出る。陳氏が自縊することで、自分の身代わりが現れ、自分が幽霊の身から抜け出せることを期待して喜ぶ。歌唱。 |
| | 有妓女玉芙蓉,前二十年,不勝鴇母的虐待, 懸梁而死,等候替身出現,以脫離其境遇。她知道陳氏將要上梁, 希望將她作為替身而脫離苦境。她裝扮女吊而上場, 跳動 而歌唱。 |
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| 2) | 陳氏、出る。自縊する。女吊がこれにからむ。 |
| | 陳氏上場, 將要懸梁而死。女吊抓住陳氏, 兩人一起回旋而激動。 |
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| 3) | 春香は夫人の自縊を発見し、あわてて、梁からおろす。 |
| | 婢女發現陳氏上梁, 急忙將她從梁上扶過下來。 |
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IV 男吊 |
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| 1) | 身代わりを待っていた男の幽霊が出て、陳氏を横取りしようする。天井からつるした白い布の上で、さまざまな演技を見せる。 |
| | 跟女吊一樣,好久等候替身的男吊,上場而在空中挂下的白布上顯出種種調吊的姿態。有”三十六吊”或”七十二吊”等曲藝性動作。 |
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| 2) | 韋駄天が出て、男吊を金槌で打って追い払う。 |
| | 此時韋駝天尊出來,用魔杆打男吊而叫他離開。 |
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V 自嘆 |
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| 1) | 女吊が出る。妓女のころの身の上を語り、嘆く。 |
| | 女吊再上場, 歌唱而說出自己一生悲慘的故事。 |
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