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高千穂柚木野神楽
岩戸七番


田仲一成撮影、2012年


「岩戸七番」



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 高千穂地区上野(下組)の柚木野2012年11月22日夕刻より23日早朝にかけて、徹夜で行われた神楽について論述する。



 まず、場地の平面図を示す。
 当屋の佐藤家の屋敷の中央座敷(仏間)を神楽の舞庭とし、天井から「雲」と呼ばれる天蓋を吊るす。正面には、神座を設け、仮面を並べる。その脇には、仏壇があり。先祖の位牌を並べてあり、扉を開いてある。
この内神屋の神座に対面するように、庭に外神座を作る。壇を面の神座に対面させる位置に榊(柴と称する)で飾った高い壇を作る。この壇から4本の綱を、内神の柱まで延ばし、柱に括り付ける。



F1 外庭の祭壇


F2 内神屋正面の神座(面様)

さて、神楽は、合計33番あり、次の順で進行する。
 
時間 舞型神名内容備考
11月22日
16:01-6:25彦舞1人舞猿田彦命一斗瓶に上がり四方を拝する
26:27-6:42太殿4人舞久々之遅命、迦具槌命、金山彦彦命、水波売命天孫降臨の時、注連を張って高天原と定め、八百万の神を招く
36:45-7:05神降し3人舞神漏岐命、忍穂耳命、中筒男命神の降臨を招く式三番
47:07-7:20鎮守2人舞大屋津姫命、抓津姫命土地を祓い固め、神を鎮める。式三番
57:25-7:40杉登り2人舞+天狗(入り鬼神)椎根津彦命、宇佐津彦命、入鬼神昇天する神を送る式三番
67:40-8:30地固め4人舞天児屋根命、太玉命、事代命、五十猛命水徳で耕地を潤し、国造りをする。護符の剣を宿主に渡す(酒宴のあと、挙行)
78:35-9:07太刀神添2人舞経津主神、武甕槌神太刀の神威により厄難を祓う。
89:08-9:50住吉4人舞大綿津見命、底筒男命、中筒男命、表筒男命海神の舞、稲荷神楽
910:20-10:40五穀4人舞倉稲魂命、保食神、太田命、大己貴命、大宮売命穀種を祭る。各々仮面、膳を持って舞う、米、粟、大豆、小豆、稗、最後に餅まき。
1010:50-11:20幣神添2人舞彦狭知神、手置帆負神幣による祓いの舞、願神楽。稚児と老婆が絡む。
1111:22-0:07七貴神8人舞大国主命、御子七神農神の舞、仮面7人,ぼんでんを持つ
11月23日
1200:09-00:32袖花4人舞天鈿女命、抓津姫命、石凝姥命、木花開耶姫命鈿女の命が天照大神の使いで猿田彦神を迎えに行く。 
1300:35-00:55八つ鉢1人舞少彦名命少彦名命が太鼓に乗って軽妙な舞を舞う。 
1400:55-01:15御神体2人舞伊弉諾命、伊弉苒命男女のかまけわざ、酒を造る。観衆の中に入り戯れる
1501:20-01:28御柴3人舞十社大明神、荒神、天穂日命村人が二つの榊に乗り、外注連を回り、庭に入って神主と問答する。 
1601:30-02:25岩潜4人舞武甕槌神、天目一筒神、手置帆負神、天穂日命安産を祈る女性の帯を襷にかけて、剣を持って舞う 
1702:35-03:05山森5人舞大山津見神、竜王の命(青・赤・白・黒)山の神と2頭の獅子。 
1803:05-03:36弓正護2人舞月読命、天日鷲命弓を持ち、悪魔を祓う。 
1903:40-04:00本花4人舞天鈿女命、抓津姫命、石凝姥命、木花開耶姫命膳に米と榊を載せて舞う。餅撒き
2004:00-04:40沖逢4人舞天村雲命、思兼神、事代主神、天穂日命水神を祀る火伏せの神楽 
2104:40-04:50大神3人舞矢房八郎拝鷹天神、道反命、伊勢津彦大海神の清めの舞 
2204:50-05:35地割5人舞素戔嗚命、天児屋根命、太玉命、武甕槌神、月読命竈の神を祀る。天界に還る竈神を女たちが裾をつかんで引き戻す。
2305:35-06:05武智2人舞弟橘姫、衣通郎姫戦いの準備の舞 
2406:05-06:28柴引き1人舞太玉命天の香具山の柴を引き、岩戸を飾る。岩戸七番
2506:29-06:45伊勢神楽1人舞天児屋根命七段縛りの大幣を持って舞う岩戸七番
2606:45-07:16手力雄1人舞手力雄命手力雄命が天照大神の隠れている岩戸を探し当てる舞、岩戸七番
2707:16-07:28鈿女1人舞鈿女命手力雄の退場ののち、鈿女の命が入れ替わって舞う岩戸七番
2807:29-07:44戸取り1人舞手力雄命手力雄は岩戸をつかんで投げる。天照大神が現れ、世の中が明るく照らされる。岩戸七番
2907:49-08:00舞開き1人舞手力雄命白面白髪の神、陰陽の鏡を持って舞う岩戸七番
3008:04-08:28日の前4人舞天児屋根命、猿田彦命、天鈿あ女命、思兼神外注連を祭り、天照大神の出現を祝福する岩戸七番
3108:28-08:50注連口4人舞天児屋根命、天日鷲命、天村雲命、天穂負命、手力雄命緑の糸を持って注連の前で神送りの舞 
3208:55-08:59繰り下し4人舞天児屋根命、天日鷲命、天村雲命、天帆負う命雲綱をとり、外注連に向かって舞う、女性が綱をとる。 
3308:59-09:00雲下ろし5人舞神漏美命、思兼命、太玉命、手置帆負命、天児屋根命雲を下す 


以下、順次にこれらの節目の内容を記す。
  1. 彦舞18:01-18:25
    天孫降臨の先導役である猿田彦命が一人で出て舞う。後続の神々を先導している。
    神庭中央に島と呼ばれる天の浮橋に見立てた斗枡が置かれる。大玉串と鈴を持った猿田彦は、この島を3回、巡回してその上に立ち、四方を拝んで神庭を浄める。

  2. 太殿18:27-18:42
    お祓いの神楽で、鎮守の杜からお招きした氏神の宿となる神庭を浄め、神殿(太殿)を作る。樹木の神、久久之遅命(木)、屋敷をつかさどる迦具土命(火)、水波売命(水)、金山彦命(金)の4人の神が舞う。

  3. 神降ろし18:45-19:05
    浄め終わった神殿に神々を招き入れる舞。神漏岐命(天神)、忍穂耳命(地神)、中筒男命(海神)の3人が八百万の神々を代表して登場し、「五方の舞」「四方割」「脇仮名の手」などの基本の所作を入れて舞う。式三番の第一。

  4. 鎮守19:07-19:20
    木をつかさどる二人の女神、大屋津姫命と抓津姫命が土地を祓い清め、鎮守の杜に降臨された神々がとどまり給うことを祈る。「反閇」の所作で、地霊を鎮め、祭祀の場を封禁する意味がある。式三番の第二。

  5. 杉登19:25-1940
    杉を伝わって神々が降臨される様を演じる。最初に椎根津彦命と宇佐津彦命の二人が赤と青の御幣を手にして舞う。そこへ山の神である鬼神が登場する。式三番の第三。

  6. 地固19:40-20:30
    天児屋根命、太玉命、事代主神、五十猛神の四人により、大地を踏み固め、神庭を封禁する。太刀を持って舞う。中央に扇を置き、「おのころ島」(古事記に見える国土誕生の場所)を表す。これに太刀を差しいれ、大地に水を与え、作物の生長をうながす。途中から、女ものの派手な帯を襷にして舞う。これは、帯の主の女性の安産祈願の願いが託されているという。舞い終わると、神楽宿の主人と元締(神楽奉納の総責任者)に太刀を渡す「宝渡しの儀」が行われる。

  7. 太刀神添20:35-21:07
    経津主神と武甕槌神の二神による戦いの舞。太鼓のリズムに乗り、太刀を高く 掲げて振り回し、厄難を祓う。

  8. 住吉21:08-21:50
    大綿津見命、底筒男命、中筒男命、表筒男命が鈴と御幣を持ち、住吉の歌を 歌いながら、海神の霊を鎮め、航海の安全を祈る。

  9. 五穀22:20-22:40
    倉稲魂命、保食神、大田命、大己貴命、大宮売命による穀物の種を祀る舞。五穀(米、きび、粟、稗、豆)の穂を手にした登場した神々が五穀の種を膳に載 せて舞う。終わると、神庭にいっぱいに撒く。

  10. 幤神添22:22-23:20
    彦狭知神と手置帆負神の二神が稲妻を象った御幣を持って舞う。稲妻が稲に霊力を与えるためという。

  11. 幤神添七貴神23:22-00:07
    大国主命が七人の御子を鍛える様子を演じる。裁着袴(たっつけはかま)を着け、六尺の太い竹竿を持った大国主が神庭の中央に座り、舞をしらない御子が一人づつ、その前に出て舞うと、その動きを止め、引っ込ませる。新人の舞人や、とび入りの村人が子神の役を演じることがある。

  12. 袖花00:35-00:55
    天鈿女命、抓津姫命、石凝姥命、木花開耶姫命が穀物の神(田の神)を招きおろす舞。穀物の霊の宿る花を讃える。猿田彦の袖を引いて結ばれた天鈿女命の故事を踏まえて、袖花と呼ばれる。 

  13. 八鉢00:35-00:55
    少彦名命が太鼓のリズムに乗って軽妙に舞い、子どもを抱き上げたり、倒立したり、曲芸を見せる。五穀豊穣、子孫繁栄を祈る。

  14. 御神体00:55-01:15
    伊弉諾命、伊弉苒命が登場し、性交の擬態などを演じ、観客にも戯れる。最後は、酒を造る所作、男根を誇示する所作などを演じて退場。 

  15. 御柴01:20-01:28
    十社大明神[荒神]、氏神[荒神]の二神が束ねた柴[榊]に乗り、天穂日命[神主]と問答する。

  16. 岩潜01:30-02:25
    武甕槌神、天目一筒神、手置帆負神、天穂日命の四人により、岩間を潜る激流を表す舞。女帯をたすきにかけ、四人舞、三人舞、二人舞と形を変えて舞う。身体をそらせて右廻しに太刀を7回、振り回す、隣の舞手の白刃を握って素早く入れ替わるなどの曲技を見せる。

  17. 山森02:35-03:05
    青龍・赤龍・白龍・黒龍の四王が地固めと同じ所作の舞を行い、次に弓と太刀で 大山祇神[黄龍王]を招く。そこへ、二頭の猪鹿を連れた大山祇神が登場する。舞のあと、猪鹿は山の神の使いとして集落をめぐり、各家の無病息災を祈る。獅子舞の原型。 

  18. 弓正護03:05-03:36
    月読尊、天日鷲命の二神が、女帯を襷に掛け、左手に弓矢、扇、榊、右手に鈴を持って登場。弓矢の呪術で悪霊を祓う。舞い終わって、弓矢を氏子に渡す「宝渡しの儀」を行う。

  19. 本花03:40-04:00
    天鈿女命、抓津姫命、石凝姥命、木花開耶姫命の四女神による次の年の豊穣を祈る舞。祈願成就を花の結実に重ねて、「本花」という。新穀と榊を載せた膳を三本の指で支えて舞う。最後に観衆に向かって餅を撒く。

  20. 沖逢04:00-04:40
    天村雲命、思兼神、事代主神、天穂日命の四人が白衣、白袴、鉢巻、紙の宝冠の浄衣姿で舞う。水神を祀る火伏の神楽である。御幣を渦巻のように廻す所作があり、水の擬態とみられる。

  21. 大神04:40-04:50
    矢房八郎拝鷹天神、道反命、伊勢津彦が大幣を持って登場。三人は、荒ぶる神で、大幣の威徳により魔払いされ、里人の守護神になる。禍を祓う舞。

  22. 地割04:50-06:50
    素戔嗚尊[荒神]、天児屋根命[神主]、太玉命[幤挿舞]、武甕槌神[太刀舞]、月読尊[弓舞]が登場。もともと土地の神による耕作地の割替えを表す神楽だったが、密教と習合した「三宝荒神」の影響を受け、『竈祭り』に変貌した始めに竈場の台所で神事が行われる。素戔嗚尊(荒神)が食事場を通り、神庭に帰ろうとすると、食事場で待ち受けていた女性たちが袴の裾を引っ張り、帰還を妨げる。竈神は、妨害と抵抗しながら神庭に帰る。ここで弓、刀、幤、荒神、神主の順に神庭に舞いこみ、神主と問答を行う。問答が終わると、荒神は神主に魂鎮めの祓いによって守護神となる。神主は、荒神に御神酒を献じる。

      
  23. 武智05:35-06:05
    弟橘姫、衣通郎姫の二女神による舞。女帯を襷がけし、両端に赤と青の幣を付けた鞭を持って舞う。武甕槌神の戦いの準備の舞。

  24. 柴引き06:05-06:28
    太玉命が榊を根ごと引き抜き、岩戸の前に飾る舞。
    岩戸七番の第一。

  25. 伊勢神楽06:29-06:45
    天児屋根命が七段飾りの大幤を持って舞う。
    岩戸七番の第二。

  26. 手力雄06:45‐07:16
    手力雄命が天照大神が隠れている岩戸を探す舞。
    岩戸七番の第三。

    F33 手力雄


  27. 鈿女07:16-0728
    天鈿女命が岩戸の前で舞う。
    岩戸七番の第四。

    F34 鈿女(後ろは岩戸)


  28. 戸取07:29-07:44
    手力雄命は、岩戸の扉2枚を1枚づつ、つかんで投げる。天照大神が現れ、世の中が急に明るくなる。
    岩戸七番の第五。

    F35 戸取(手力雄命)


  29. 舞開07:49-08:00
    手力雄命が天照大神の再臨を祝い、喜んで舞う。
    岩戸七番の第六。

    F36 舞開(手力雄命)


  30. 日の前08:04-08:28
    天児屋根命、猿田彦命、天鈿女命、思兼神の四人が、外注連を祭り、天照大神を祝福する。岩戸七番の第七。

    F37 日の前


  31. 注連口08:28-08:50
    手力雄命が陰陽の鏡を持って舞い、神を送る。

  32. 繰り下ろし08:55-08:59
    天児屋根命、天日鷲命、天村雲命、天穂負命の四人が雲綱をとり、外注連に向かて舞う。女性が加わり、一緒に綱を引く。

  33. 雲下ろし08:59-09:00
    神漏美命、思兼神、太玉命、手置穂負命、天児屋根命の四人が神庭の天蓋(雲)を下す。

  34.