江西南豊県水南村儺舞・儺戯（1991年9月、田仲一成撮影）

中国江西の儺舞・儺戯

南豊県水南村儺舞・儺戯

（1991年9月、田仲一成撮影）

　　この村は、南豊県の南郊、橋背郷にあり、戸数450、人口2556人の大規模村落である。朱姓、胡姓が多数を占め、陳姓これに次ぐ。儺舞・儺戯は本村の武術師、劉求孫が武漢から持ちこんだものという。戦前は、春節に元来、儺神廟であった「福主殿」で「起儺」を行い、正月十六日まで、村内の坪場にて演じたという。儺舞隊は、全村を通じて８班あり、各班３０数個の演目を持つ。1949年以前は、毎年、江西省内の宜黄県、黎川県、南城権（広昌県）などを巡歴して各地の儺礼に出演したという。時には、隣省の福建省建寧県にまで、足を伸ばしたこともあるという。広域遍歴の芸能団としての実態を有する。　

以下、小学校の校庭で、次の順に儺舞・儺戯を演ずる。

Ⅰ開山

紅布纏頭、双角、巨眼、巨口の鬼面をかぶり、水色の褲子に紅地花紋の上衣を着た開山が、跳びはねながら、斧を振り回す。

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Ⅱ楊戩（二郎神）

紅布纏頭、高い冠帽をかぶり、眉間に１目を配して三目の白面仮面をかぶり、紅色の褲子に黄地花紋の上着をつけた楊戩（二郎神）が登場、槍を振り回す。

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Ⅲ那托太子

紅顔白面の仮面に黒帽をかぶり、水色の褲子と白地花紋の上着をつけた那托太子、刀を紐で垂らした輪をもって登場。輪を振り回しながら、跳ね回る。火輪に乗る幼童の地那托太子の姿を示す。

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Ⅳ和合
　紅布纏頭、黒帽に紅頬白面の和合童子二人、一人は紅褲、一人は水色褲子で登場。素手の対拳を繰り返しながら、場内を跳舞する。

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Ⅴ魁星
　双角、両牙、褐色鬼面をかぶり、水色の褲子に紅地花紋の上着をつけた魁星が登場。右手に筆、左手に印をもち、東西南北中の五方を移動し、身をそらし、両手をあげて筆と墨を示しつつ、屈伸舞踏をおこなう。

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Ⅵ財神
　高帽、円眼、金色仮面をつけた財神、右手に短剣、左手に水盃をもって登場。右手の　短剣を手首だけで振りまわし、片足をあげてバランスをとる。これを繰り返す。

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Ⅶ水揜金山

『白蛇伝』を演じる。

　１法海和尚、許仙出る。許仙は和尚の後ろに身を隠すように腰をこごめる。

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２頭に盤居した白蛇を戴いた女性仮面をつけ、白地花紋の上着、紅色褲子をはき、腰に黒い裙をつけた「白蛇」の精、登場して許仙をさがす。ついで、青蛇の盤居した女面をかぶり、白地花紋の上着、水色褲子に白い裙をつけた「青蛇」の精が登場。二人は対舞する。

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３許仙、場内に跳び出る。青蛇につめよられ、扇をかざして旋回し、避けようとする。そこへ白蛇が登場、許仙は二人の間をすりぬけて、法海の後ろにかくれる。法海は払子をふるって、両蛇を追いはらう。

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Ⅷ打蚌殻
白皙豊頬の仮面に白地花紋、緑色褲子をつけ、背に二枚の紅色の大貝殻を背負った蚌が登場。船をこぐ梢公と網をもった漁夫が登場、漁夫は、蚌に向かってたびたび網をなげるが、捕獲に成功せず、かえって大貝殻に手をはさまれる。三度目の網打ちでようやく捕獲に成功し、退場。

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Ⅸ紅孩児
『西遊記』40-42回に見える「紅孩児の難」を演じる。

１紅色猿相の仮面、白地黒斑の上着に緑色褲子をつけた孫悟空が登場。棒をふるって跳躍。ついで黒色猪相の仮面、黒袍を着た、釵を持って登場。続いて、紅帽白面、薄緑色の長袍を着た三蔵法師が登場。さらにそのあとに、黒色仮面に紅地花斑の上着、水色褲子の沙悟浄、両端に荷を吊るした天秤をかついで登場。やがて四人、縦隊で退場。