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中国江西の儺舞・儺戯

IV  南豊県石郵村の儺舞

(1990年9月、田仲一成撮影)

石郵村に儺神廟があり、この村の儺神仮面を祀る。平面図を示す。   

 

南豊県石郵村の儺舞・儺戯 田仲一成 東洋文庫

儺神廟
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ここの祭祀組織は、十五の単姓または寡姓村落から成る。次の通りである。


1石郵村(呉姓、黄姓、劉姓など)2柏蒼村(聶姓)
3河陂村(羅姓)4饒舎村(姚姓)
5石欠村(封姓)6耀里村(封姓)
7楼下村(李姓多し、雑姓)8港下村(封姓)
9廬下村(封姓)10塘池窠村(呉姓)
11木港下村(何姓多し、雑姓)12上宝湾村(劉姓多し)
13下宝湾村(劉姓多し)14龍淵村(雑姓)
15青塘村(雑姓)

 全体の人口は、2000人ぐらい、この中で石郵呉氏が組織の中核をなす。
 正月初一日から初八日まで8人から成る儺隊が石郵村で儺舞を演じた後、儺神廟を出発し、河陂村、柏蒼村、木港下村、饒舎村、石欠村、上宝湾村、下宝湾村など外村を巡回する。十六日の晩に石郵村に帰還し、捜儺(各戸訪問逐疫)を行う、十七日凌晨、儺神廟に帰還する。

その演技は次の通り。

(一)起聖

 赤衣、赤袴を着用した8名の伯公と呼ばれる儺隊が、儺神廟内に集合、燭や香をともし、聖相(仮面)を迎える。8人は、神壇の前に跪座し、大伯父公は表文を読み、陰陽の卦杯を竹の先に紐で吊るし、神の加護を念ずる。

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(二)儺舞

Ⅰ開山
 黒面に黄金の眉、目、鼻、口をもつ開山神の仮面をかぶった儺人1人、手に柄の長さ二尺の斧をもって登場、端正剛健な動作で斧を前後左右に振るう。天地開闢の神、盤古氏の姿を演じるという。黄金四目の方相氏の面影を宿す。

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Ⅱ紙銭
 黒面に黄金の眉、目鼻、口を持つ剽悍、獰猛の仮面をつけた儺人一人、登場。古代神話の人類創造の神、女媧氏であるという。ただし、面貌怪異で、女性には見えない。長い紐の先に紙銭(黄紙を巻いて銭の形にしたもの)を手に持ち、天を仰ぎ、地を俯瞰する所作を演じる。紙銭を両手にとる所作は、黄土を博って人の形を作る動作を示すという。

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 Ⅲ雷公
青い面に尖った口、黄金の目鼻の雷神仮面をつけた儺人一人、登場。舞踏して退場。

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 Ⅳ 儺公儺母
 白面白髯の老翁、杖をもって登場。同じく白面の老媼、儺神廟に奉祀してあった子供の人形(儺仔)を抱いて登場。二人並んで、儺仔を愛撫する。吻仔、把尿など。儺公儺母は貴州、湖南では、人類の始祖、女媧、伏羲の兄妹と考えられているが、ここでの二人は、神秘的な面影はなく、土地公、土地婆のイメージが強い。

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 Ⅴ酔判(酔酒判官)
 黒面に黄金の目鼻口眉をもった判官(鍾馗)、高い帽子をかぶって登場。判官は酒に酔う。そこへ青面に黄金の目鼻の小鬼2人が登場。酒を酌み交わし、猜拳、酒令に興ずる。判官は目を覚まし、小鬼2人を見て興を発し、三人で舞う。判官は「香火訣」「照鏡」「武踏」などの所作を演じ、「灌酒」「燗酒」「酔酒」の姿を見せる。

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 Ⅵ跳凳子
 酔判の続き。小鬼1人が椅子をもって登場。これに座る。他の小鬼も登場、二人の小鬼が戯れているところへ、判官が登場。椅子に座った小鬼は、跳びおりて判官に席を譲る。判官は椅子に座り、小鬼の対舞を見る。

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 Ⅶ双伯郎
白面の将軍仮面をつけた伯郎二人、登場。太刀をふるって対戦する。二郎神(楊戩)の戦闘と勇力を示す。

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 Ⅷ関公
紅面黒髯の関羽、大刀を抱えて登場。大刀をふるって跳舞する。これも鬼追い(趕鬼)の儀礼である。

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(以上)