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江西省の西北、婺源県は、もと安徽省徽州府に属し、民国になって江西省属となったが、文化的には徽州の色彩が強い。儺舞も物語性が強く、安徽池州の儺戯に近い。長径村は程氏一族の単姓村で、儺礼は、その祠堂を中止に挙行される。その平面図は、次の通りである。
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| 中国江西の儺舞・儺戯 |
III 江西婺源県秋口郷長径村の儺舞・儺戯 |
| （1991年9月 田仲一成 撮影） |
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江西省の西北、婺源県は、もと安徽省徽州府に属し、民国になって江西省属となったが、文化的には徽州の色彩が強い。儺舞も物語性が強く、安徽池州の儺戯に近い。長径村は程氏一族の単姓村で、儺礼は、その祠堂を中止に挙行される。その平面図は、次の通りである。
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| 婺源県秋口郷長径村 近景 |
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| 婺源県秋口郷長径村 祠堂 |
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一 遊村逐疫祠堂の横の小庭に儀卓を置き、赤い布を頭に巻き、鎧姿の戯服を着た儺人1人、その間に立つ。介添え役が呪文を読むと、儺人は、身を屈して儀卓の上に載せてある「八十大王」の巨形仮面に顔をつける。介添え役は、紐を結んで顔に固定し、着戴する。ここで、儺人は腰にさしていた斧を右手にとり、村の各家を回り、さらに村の山野を駆け回って、瘟疫を駆逐する。祠堂の舞台の前を何度も駆け抜けたあと、舞台に駆け上がり、ここで待機していた部下の小鬼と共に、呪文によって、憑依から解かれる。このあと、一休みののち、再び、八十大王の仮面をつけ、村はずれの河の対岸まで瘟疫を送り出して終わる。
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二 儺舞・儺戯祠堂の舞台の上で、仮面をつけて儺舞・儺戯を行う。次のとおり。
I 舞花
１ 夜叉打旗
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２ 丞相操兵 元帥蒙恬（円形紅面）、丞相李斯（方形黒面）の二人、登場して中央奥に並ぶ二つの椅子の上に立つ。夜叉は六人の諸侯を先導して入場。諸侯は、巨口、巨眼の鬼面、頭部に長い角毛を立てる。左手に槍、右手に縄鞭を持つ。円陣を組んで跳舞しながら舞台を回遊、蒙恬と李斯が閲兵する。跳舞の最中は常に縄鞭を振り回し、馬上の行進を示す。次いで二列縦隊となり、対面して腰を折り、馬鞭を振るう。再度、円陣にもどり、槍、鞭を置き、素手で対舞したのち、また武器をとる。左右三人づつに分かれ、次いで1列縦隊の円形陣にもどる。夜叉、中央に出て、元帥と丞相を先導して退場。諸侯６人、円形跳舞、1人づつ、中央に出、槍を突き出す所作を示して、上手に退場。
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３ 送毒酒 丞相李斯、士卒二人を従えて登場。士卒1人は、槍の穂先をもち、体を左右に揺らす。三人、手をとり合い、並んで右足を上げて数歩進み、向きを変え、今度は左足を上げて進む。この動作を繰り返して、退場する。士卒二人のうち、槍の穂先を持つものは、諸侯の仮面、他は小鬼の仮面をつける。いづれも頭には長い毛角をつける(雉の羽、武将の標）。この場面は、丞相の李斯が、蒙恬軍とその監軍扶蘇太子に毒酒を送ってきたことを示す。三人が上半身を左右に揺らすのは、酒を飲み、酔いが回ってきたことを示す。この段階では、まだ、酒に毒は入っていない、丞相も共に飲み、酔った振りをしている。
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４ 飲毒酒 士卒（小鬼）と蒙恬元帥が丞相李斯を中にはさみ、三人が並んで歩行。片足を振り上げ、数歩進んで、向きを変え、別の足を振り上げて歩行する。これを繰り返す。三人、離れると、それぞれ上半身を左右に振る。最後に李斯と蒙恬の二人が残り、銅鑼に合わせて、激しく跳舞する。左右の手と左右の足を交互に突き出し、舞台上を動きまわる。これは、李斯が蒙恬と士卒に毒酒を贈り、毒が回り、蒙恬と士卒が苦しむ場面を演出している。李斯も酔った振りをするが、最後は、1人残り、毒殺に成功したことを確認して、意気揚々と舞い、堂々と見えをきって退場する。
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II 魁星点筆 黒面巨眼の仮面をつけ、官服を着た魁星が登場、右手に筆、左手に墨入れをもち、手首を振りながら、舞台中央を数回往復する。ときどき、片足で立ち、上半身を捻って、見得を切る。科挙の試験問題を受験者に教えてくれる福神であり、村民の「昇官発財」に願いを託す。
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III 后羿射日 紅色円形の仮面をつけた后羿が、紅衣に弓矢を背負って登場。続いて大きな円形の箕をもち、青い上衣に紅色の褲子を着込み、藍色円形の仮面をつけた太陽が登場し、舞台の奥にうづくまる。后羿は、弓を地上に置き、縄を取り出して、振りまわし、太陽を捕縛しようとする。太陽は、逃げ回り、身を隠す。后羿は、上下、左右、前後を探しても見つからず、中央に腰をおろして思案する。太陽は、後ろからそっと近づき、右手の棒で后羿の尻を打つ。后羿は立ち上がり、弓を背にかつぎ、捜索を果たせぬまま、退場する。天空に十個の太陽が出て旱魃に見舞われとき、后羿が9個を射落とし、旱魃を救った話である。ここでは、最後に残った1個が、后羿の追及を免れる。
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IV 北斗 紅色円形の仮面をつけ紅色の官服を着た北斗が、右手に筆をとって登場。跳舞しながら、舞台の四隅、中央で朱を点じる。北斗は長寿の象徴、村の東西南北中の五方に寿福を賜與し、村民の寿命を延ばしたことになる。
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V 孟姜女 孟姜女が長城建設に駆りだされた夫の范仕郎に綿入れを届けに行く話を演じる。
１ 土地神先導
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２ 太白金星先導 姜女は、再び旅を続けるが、疲れて動けなくなる。そこへ白髯褐色面の老人姿の太白金星が登場、孟姜女の包袱を背負ってくれて、同行する。舞台をゆっくり旋回。やがて金星は退場。
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３ 烏鴉先導 孟姜女は、再び道に迷う。大きな烏が飛んできて地上に降りる。孟姜女が道案内を請うと、烏は、応諾する。孟姜女は、烏の嘴に白い布を結び、先導の目印にすする。烏は空中に飛び、孟姜女は、あとを追って旅を続ける。舞台をゆっくり旋回して退場する。
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VI 開天闢地 黒色巨眼、巨口の怪獣風の仮面をつけ、裸身に腰布をつけた盤古氏、巨斧を手にもって地上に伏せる。徐々に身体を起こし、天を持ち上げる所作。後ろの幕があがると、六人の部下が盤古と同じ姿で身を伏せている。盤古が巨斧を右手に立ち上がると、六人の部下も斧を手にその後ろに従う。ついで盤古を先頭に円形陣を作り、舞台を回遊、跳舞する。盤古は、斧を上から振り下ろし、山を叩き割る所作を、左右中の三方向に行う。終わると、斧を上下に上げ下ろししながら、小刻みに前進する動作を繰り返す。一列縦隊、一列横隊円形陣、さらに左右二隊に分かれて斧を振る。最後は、六人が盤古を囲んで激しく跳舞して終わる
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